d ミナト

169. ライアー
... 2017/01/31...Tue // 00:17:18

(こっそりこっそり、今日は夜更かしのライアーは胸に一通お手紙抱えて。こっそりこっそり、自分の足でお手紙を届けに行った。真っ暗は怖くない、今日はお月さまも見えている。何度か道に迷ったり、違うものに気をとられたり、同じところをぐるぐる回ったりもしたけれど。そうっとそうっと、そのお家にたどり着いたならポストにことん、だ。)

ミナト おたんじょうびおめでとう
きょうはきっと 朝からいいこと いっぱい
いつも ありがとう

(画用紙にクレヨンで書いたそれを二つ折りにしたカード。その端っこに『ジジイと飲むヨーグルトチケット』が三枚ホッチキスで綴じられている。一枚目、青い画用紙はその裏に「たなか」、二枚目、黄色い画用紙はその裏に「さとう」、三枚目、ピンクの画用紙はその裏に「ささき」。それらは貴方とも知り合いの、ご近所の老人たちの名前。ポケベルで聞いた貴方の好きなものを実現すべく、お家をまわったり待ち伏せしたりして、「おねがいします」とお願いをした。「ミナト、ジジイと飲むヨーグルト、すき…なので」と。残念な頭は微妙な勘違いをして、そのままそれを贈り物にしたようだ。空が明るくなればきっと、選ばれし三名のジジイたちが彼の家へ向かうはず。チケットと書いておきながら、システム的にはデリバリータイプらしい。「あの黄色い髪の子がねぇ、これを持っていって赤羽くんと一緒に飲むようにって」なんて証言がちらほらあったかもしれない。――茶色、はやっぱり自分じゃ作れなくて。だから選ばれし三名のジジイのうちの一人に頼んでおいた。「茶色、も…すき、なので」と。果たしてその『茶色』の正体が何になったのか、それはライアーにも分からない。お手紙を届けた先でちょっぴり、彼のことを想ってドアを見つめた。片手には彼からもらったきらきらの傘。数分、数十分、或いは数時間、そこでじぃっとドアを見ていた。やがて満足したのか、おもむろに立ち上がり欠伸をしながらふらふらと海辺に帰る頃、空はもう白んで、早起きの小鳥たちが一日の始まりを告げていた。傘を広げれば星空が広がる。――彼が生まれた日。とっても特別な、一日の始まりに。おめでとう、ぼくの相棒。)


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