A176. ×× | |
|
(バレンタイン当日、郵便配達員の青年は朝からとある人物を探していた。朝一で向かった寮にその人物、或いは彼の同居人が在宅していたならその日の仕事はスムーズに終わるだろう。どちらも不在であれば、担当の荷物を配達しながらその人物を探すこととなる――日が暮れるまでは。今朝預かったばかりのこの届け物、どうやら時間が経つと中身がダメになる可能性があるらしい。タイムリミットまでに無事に配達できるか、青年の腕の見せ所だ。)よし、必ず時間までにリーダーさんを見つけるぞ…! (シンプルな黒い保冷バッグの中には、やっぱりシンプルな白い箱。紅い花のシールを外して箱を開けると、透明フィルムに包まれたワッフルが二つ、黄色いペーパークッションの上にちょこんと並んでいるだろう。ピンクのリボンが掛けられた方は、とびきり甘いカスタードクリームとイチゴを挟んだイチゴカスタード。茶色いリボンの方は、大人の香りがするコーヒーワッフル。勿論甘さと苦さは8:2。カスタードが傷まないように、箱の隅にはペンギンが描かれた保冷剤がぺたりと固定されている。――箱にもバッグの中にもカードの類は見当たらず、急ぎ足の青年は聞かれない限り差出人の名も告げずに次なる配達先へと向かって行くだろう。) | |