---209. 西崎イツキ | |
| (春の海岸に足を運べば、夜明けの静けさにすぅとひとつだけ息を吸い込んで。宛名のないその手紙はポストではなく、手のひらから空へ。この島の桜を仰いでいつか、話したことを思い出す。白い砂を巻き上げる風が滑らかな花びらをさらって消えていく。星に溶けるように高く高く、舞い上がった花びらはどこかへ届くだろうか、海に消えるだろうか。柔らかく生ぬるく、夜は時折まだ肌寒ささえ思わせる春の風。帰路に目にした幻想的な光景は夢のようなそれで、――「今年も、こちらでは桜が咲いているよ」。花の盛りも、いつしか過ぎて。) | |