鷲宮さんへ216. 亘秋久 | |
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鷲宮さんへ 優しい人があらわれますようにってことで。 とりあえず四十歳になるまでは持ってたらいいんじゃね? (春めいた便箋と共に入っていたのは巷で噂の桜を加工した小物。朱色と桃色が交互に色づく桜の花のキーホルダーは恋愛成就の意味である。それを彼が知っているか知らぬか気にせず、ポケベルでの会話を思い出して思い立ったものだ。以前訪れたアパートのポストに入れて、上機嫌に鼻歌交じりで男は去っていくのだろう。) | |
亘さんへ220. 鷲宮八慧 | |
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亘さんへ キーホルダー、有り難うございました。四十路以降もなくさないように気を付けます。 俺にとって、やっぱり亘さんは優しい人です。何だかんだで友人思いですよね。 そんな亘さんにこそ現れて然るべきと思いはしますが、わざわざ祈るまでもないでしょうから。 不味かったら捨ててください。 (皐月の便箋に照れ臭くなるようなメッセージを綴り、さっさと封筒に閉じ込める。優しい友人のもとに届くのはその手紙と、もうひとつ。共に贈った小さな紙袋に入っているのは、ちょっぴり不格好なまんまるのクッキーだ。巷を賑わしたそれではないけれど、ほろほろと崩れるクッキーには桜の花塩漬けがのせられている。ラッピングも店の物には劣る仕上がりだけれど、手作りする際に込めた気持ちだけは誰にも負けない。──願わくは、口に合うと良いけれど。些か不安を感じながらも配達員に託し、その場を後にした。) | |