ニコさんへ238. 杠霧人 | |
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(井戸端に顔を出した後、慕っている学芸員より5時間ほど説教をうけた人形師はげっそりとした面持ちでポスト前にやってきた。手には一枚の絵葉書。そっと投函し、ポストに寄りかかるように項垂れた。)………そうだよな、ここは本土とはちげーんだ。(改めて思う。人付き合いが決して上手くはない自分。これまで、こんな風にどれだけの人を言葉で傷つけて怒らせてきたのだろう。――本土にいた頃は人間関係が希薄で幅広く、友人は『使い捨て』だった。失態を犯したとて、また新しいのを探せばいいだけ。しかして、此処は違う。響咲島は全てが狭く、深い。此処を終の住処と決めたのは己自身、なれば…変わらねば。瞳を閉じ、口の中で呟く。「ごめんね」。明日では遅い。思い立ったが吉日と、綴った葉書。そこには想いの一端と、ポケベルのアドレスが記されている。) オレさ、あん時井戸端で ニコさんのことないがしろにしたつもり全然ねーの。 言葉選び間違ってごめん。……だから、怒んないで。 今度時間空いた時にさ、ちょっとお高めの店で夕飯奢るんで、 それでチャラにしてくれると嬉しい。 | |
杠240. Nico | |
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(井戸端でのことを振り返って頭を抱えていたのは1人だけではない。やってしまった…深く考えるよりも前に反射的にしかも攻撃的ともとれる物言いをしてしまうことに後悔することも多い。今回だって少し言い過ぎたかと反省していたところだった。そんな、夕暮れ――ポストに葉書が入っていることに気付きそれを読んで驚いたように目を丸くすればそれを持って家に戻る。何度も読んで返事を考えている間に気付けば夜だ。ああでもないこうでもないなんて考えながら筆を進める) ……分かってる。 つか…お前が謝る必要ない。 オレに関わったら傷つくって分かってるのに、物好きだな。 奢るなんて子どもらしくないこと言わなくていいぞ。 連絡は、暇が出来たらする。お前がしろって言ったんだからな。 いざとなったら迷惑とか、無しだぞ。 あと、怒ってねえよ。 悪かった。 (素直に謝って誘いにもありがとうと言えばいいのに、手紙ですらそう出来ないらしい。それでも何度も何度も書き直したのだがこれ以上の事は書けず最後にやっと謝罪の言葉を書くべきだと添えた。ぶっきらぼうさを緩和しようと便せんは以前に買った自分としてはお気に入りの可愛らしい柴犬の柄物だ。それをポストに投函する。彼よりよほど、この男の方が子どもっぽくて情けない) | |
ニコさんへ241. 杠霧人 | |
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爺さん待って!ちょ、オレ手紙出したいから…!わーってるって逃げない逃げない。収穫の手伝いでしょ、ちゃんとするする!だからちょっとだけごめん、すぐ戻ってくるから。(道中、馴染みの翁に捕まり、今日も今日とて畑仕事の手伝いをさせられることとなった杠。しかしてその歩はまっすぐ畑へと向かわず、翁に断りを入れ、再び先日やってきたポストへと伸びていた。色褪せたポストに葉書を投函する。相手がくれた手紙の、便せんの柴犬が、可愛らしくて微笑ましくて、つい手持ちのもので似たようなのがないか、引っ張り出しては見つけた葉書。一時流行った子猫が鍋の中にくるまり眠る『ねこ鍋』の絵葉書である。) 手紙の返事貰って、なんていうか、すげー嬉しかった。 あー…手紙出して良かったなーって、そればっか。 いやだって謝罪の意味込めてだし、奢んねーと意味ないでしょ。 それにオレ子供じゃねーし。 連絡も待ってる。時間出来たらいつでもベルしてよ。 迷惑なんて全然思ってねーからさ。 <追伸> 貰った便箋、超可愛いかったんだけど(笑) あーゆーの好き?かなと思って、絵葉書これにしてみました。 犬じゃなくてごめんね。 | |