八慧さんへ254. 花野紅より | |
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(本日の主役であるサラリーマンさんのもとに届くのは柔らかな夕焼け色の包装紙に包まれた丸い箱。白いリボンをしゅるりと解くと、可愛らしい猫が十数匹顔を出す。さくさく食感のクッキーはプレーンとココアとハニージンジャーの三種類で、中には一つだけ、二匹の猫が寄り添って尻尾でハートを描いている凝った形のものが混ざっているだろう。王冠型のバースデーカードには海を連想するエメラルドの言葉が泳ぐ。) お誕生日、とってもおめでとう…! 困ったことがあったらいつでも呼んでおくれ。 いっぱいいっぱい、幸せになぁれ。 (ちょっぴり不器用で寂しがり屋な彼が、もう迷子になりませんように。優しい迷子くんの手を引いてくれる人がいるのは勿論知っているけれど、もしものときはぼくもいるからね?――なんて、言葉にしなくてもきっと彼には伝わる気がした。) | |
花野へ257. 鷲宮八慧 | |
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(寒風に吹かれると、ふと思い出す。夕焼け色の海に、ちいさな手のぬくもりを。──海辺の邂逅から随分経つが、あの名探偵は相変わらず親切だ。近頃は忙しくしているらしいのに、いち依頼主の誕生日祝いも忘れないで。淡い色の包装紙を丁寧に取り去り、白いリボンをほどき。最後に丸い蓋を開ければ、口元は忽ちにして綻んだ。ふわりと舞う甘い香りのなか、心憎い演出をみとめては二匹の猫を摘み上げよう。そしてひと齧り、ふた齧り──………………美味いな。 月並みの、然れども心からの称賛を零し、丸い箱に蓋を為直した。代わりに手繰り寄せるは、シンプルなレターセット。) 祝ってくれて有り難う。嬉しかった。 それから、ちょうど困ったことがある。 あの猫たち。ひとりじゃ面倒見切れねえから、良かったら花野の手も貸して。 最近忙しいんだろ、息抜きだと思ってヨロシク。 クッキーには紅茶が合うのか? 兎に角、また今度。 鷲宮 (大勢の猫を連れて来てくれたことを利用して、ささやかなお茶会を提案しよう。紅茶に日本茶、それからコーヒー。フルーツジュースや炭酸飲料なんかも用意すれば、一つくらいは彼の口に合う飲み物が見つかるだろう。──精一杯のおもてなしに、溢れ返らんばかりの感謝を込めて。) | |