墓守の旦那258. 利谷趣里 | |
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(十九日の次が二十五日であることで己の芸のなさが露呈することについて男は頭を抱えていた。――が、現時点での主題はそこではない。酒を奢ると約束した相手にひとまずの礼を伝えようと連絡の手段を探してみれば、季節柄か店先に並ぶのは華やかなクリスマスカードばかりである。それもまた一興と手に取ったのは、白髭のサンタが疲れ果てて床に伏している横で二頭のトナカイが酒を酌み交わしているという何ともシュールな絵柄であった。) その節は世話になった。ありがとさん。 約束通り酒でも奢るわ。忘年会でも新年会でも、都合のいいとき声掛けてくれや。 (例えば自腹でクリスマスケーキのひとつでも購入して贈るべきかとか、或いはチキンなら複数あっても後日に回せまいかとか、そんなことを思ったものの、彼の伴侶は正に今が繁忙期であることを思い出せば顔を付き合わせて主の誕生を祝っている場合でもないかと思ってとり止めた。代わりに鳩の形に掘られた石製の小さなモチーフをふたつ添えておく。恒例の箸置き――それは彼が誰かに贈るばかりで、彼自身が持っているのかは定かではなかったから――にしてくれても構わないし、文鎮にするにも役立つだろう。何にせよ、より具体的な礼とその他諸々に関してはまたの機会を楽しみに。) | |
ひびマの店長さん264. アンバー | |
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(年の瀬。商店街もすっかり年末年始の休業に入り、閑散とした道を歩く。鏡餅やお節などの正月料理、墓地管理小屋、敷地内の大掃除を終え、今年最後の仕事はポスト前へ赴くこと。その手には知人、友人に綴った年始の挨拶状があった。なかにはクリスマスに届いた小粋のメッセージカードの送り主へのものも、勿論。ポケベルでプレゼントの話をしたのは記憶に新しい。他愛ない話が果たして彼の役に立ったのか定かではないが、同封されていた箸置きと頂戴したメッセージを見るに、当日は良い方向へ流れていったのだろうと推測できた。2つの箸置きは今は食器棚に眠っている。今度恋人が食事に来た時にでも食卓に並べようかと楽しみがもう既に彼の言う礼を充分とも思えたが、縁を結んだ友人と酒を飲む機会があるのであればそれを逃すのも惜しい。ポストへ年賀状を投函し、再び来た道を戻る。犬と梅の花で描かれた墨絵の年賀葉書には、年始の挨拶と共に以下のように綴られていた。) あけましておめでとう。 此方こそ、昨年は世話になった。 新年会は宵宿で構わねえかい? 詳しい日時に関しては、年明けてからでもベル飛ばすからよ。 今年も鷲宮さんと2人仲良くな。 | |