狐さんへ278. 月下直緒 | |
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お久しぶりです、狐さん。つきの湯の看板猫、月下直緒です。 ふざけた書き出しでごめんなさい。言い訳させてもらうと、狐の兄さんには看板猫のほうが馴染み深いかと思って……。 かなり前のことになるけど、あの時はお世話になりました。 怪我の具合はいかがですか。傷痕として残ってないか、今も心配です。 逃げるのに必死だったからかな。あの夜のことはあやふやです。 でも狐の兄さんが俺のこと、うちのことを守ろうとしてくれたのはよく覚えています。 本当にありがとうございました。 今度は餌でもなく、戦友?でもなく、普通のガキとしてお喋りできると嬉しいです。 狐さんもしばらく忙しいみたいだから、あんまりおいたしちゃだめですよ。 体に気を付けてください。 いつでも遊びに来てね。 (利口でないなりに、努めて畏まりしたためたらしい。猫の足あとが散りばめられるレターセットには往時のお礼が綴られて。手紙とともに送られるは和菓子屋の羊羹詰め合わせと、つきの湯の特別招待券三枚。招待券は月下お手製で、デフォルメされたキツネが沢山描かれている。) | |