b キーホルダーをくださった、ニコさんに

288. 不動一生
... 2018/07/03...Tue // 00:35:31

(――ことん。彼の家の郵便受けに一通の茶封筒が入れられる。厚さからして中身は手紙だけではないらしい。宛名も差出人も、それに本文の白い便箋の中にまで。どこか四角く、書き順通りにきっちり書かれた文字が綴られている)

先日はカモメのキーホルダーを有難うございました。
手作りには手作りでという助言を頂いたので、
素人の手際でお恥ずかしいが簡単な手芸をしてみました。
宜しければ暑い日にでもお使いください。

(同封されていたのは髪を結う為の黒いゴム。くるみボタンの飾りがついており、そこには刺繍でアヒルの親子が描かれている。無論、一朝一夕でそんな細工が出来る訳では無いので、既製品である。手芸屋で一頻り悩んだ後、ゴムとボタンと、それらを繋ぎ合わせる金具を買い求め、帰宅後にペンチで取り付けて作ったものである。たったそれだけの事でも中々骨の折れるもので、やれ力を入れ過ぎて金具が歪みそうだの、なんだか曲がってしまって上手くつかないだの、それは楽しい奮闘をしていた。――追伸と書かれた二枚目の便箋がある)

追伸
迷惑くらい、いつでも、いくらでもかけて頂いて構いませんので
どうぞお気になさらず。

(どう書いたものか悩んだのか。二枚目の紙の端が若干だがよれていた。走り書きのようにも見える追伸は会話の中で紡がれたなら十中八九、早口になっていた類のもの。或いは、言わずに呑み込んでしまったかもしれない事。だからこそ、伝えたかった心に相違はないのだ)

h お巡りへ。

289. Nico
... 2018/07/07...Sat // 17:18:24

(郵便受けに何かが差し込まれた音がしたのは昼前だった。丁度、昼食を何にしようかと考えていたところで新聞が届く早朝以外にこういう音がするのは珍しいことだったからすぐに覗きに行った。贈り主の名を見てから少し膨らんだ封筒を掲げて軽く左右に振ってみれば何かかさかさと音がした。リビングまで持ち帰り丁寧に封筒を開けて掌に転がり出てきたのは可愛らしい髪ゴムだ。そのアヒル柄を見て懐かしい表情をしてから一緒に入っていた手紙を読み、その日のうちに返事を認めたのだった)

アヒルを選ぶセンスがいい。
かわいいから、使わせてもらう。
手芸、よくできましたで賞やるよ。

追伸も、ありがとう。


(去年の夏に見たアヒルを思い出すそのゴムをじっと見つめてからゴムやらヘアクリップなどが仕舞われているところに大事に仕舞おうとして―少し迷った後にそのまま鏡の前でそのゴムで髪を括ってみた。なかなか悪くない。手紙ならまだもう少し素直に礼が伝えられた。何となく彼らしくない追伸の紙のよれ方と走り書きが嬉しくもあった。フードを被った下のポニーテールはそのままに外に出れば少しの散歩の後に赤いポストに柴犬柄の封筒を投函した――)


お返事を書く


※半角英数字4-8文字

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