一生に。324. ニコ | |
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Merry Christmas To.一生 ただの平日だけど何もしねぇのも味気ないかな、と。 でも欲しいもん聞いてないから分かんねぇし、 いつでもいいから教えてくれ。 Nico (最近は冬なのに温かい日もあり、気温差も大きい。彼の誕生日の時と同じように夜に交番前をうろつく姿は不審者じみているかもしれない。交番の前にテープで貼りつけられたのは手作りの小さなリース。サンタのフェルト人形や雪を模した小さな綿。既存品の飾りなどがつけられてはいるが世界に1つの品であることは確か。そのリースに飾りと一緒に剥がせるようにくっついているのは長方形の封筒。中には短いメッセージが添えられている) | |
ニコへ329. 不動一生 | |
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(早朝。扉にさげられていた『それ』の存在にはすぐ気づき、丁重に外した後手紙にも目を通した――のだが。今年は何やらいつになく忙しい。あちらで小火騒ぎ、そちらで雪かき中にギックリ腰となった老人があり、こちらでは学院生同士の諍いが遂にRJN団を巻き込んだ大闘争となるなど――忙しい――慌ただしい――ひっきりなしに電話が鳴る――年末に向けて片付けなければならない書類が山積している――島内では握り飯を口内に頬張りながら恐るべき勢いで自転車を飛ばす巡査の姿が方々で見られた。疲労は然程無い、忙しいほど輝く性質でもある。ただ、時間が無い。手紙の返事を書こうとした時に郵便配達員から業務にまつわる諸々の書類がどっさり手渡される。封筒を探している時に泣いた子供が交番に駆け込んでくる。そうこうしている内に、サンタクロースはすっかり北国へ戻ってしまっただろう時期になっていた) (さて、一応その日一日の仕事は終了と決めている夕刻。いよいよ残り少ない日めくりカレンダーを今更に捲り、一人眉間に皴を寄せ、ぐうと体を横に伸ばしてから決然と机に向かう。途中、電話が鳴った。ええい、とぎゅっと目を閉じて留守電に切り替わるのを待った。火急の用事なら出かけねばならない、だが、あと封筒へ手紙を収めるだけなのだ。どうか今だけは此方を優先させて欲しい。力一杯祈りながら、吹き込まれる留守番電話のメッセージに耳を傾ける。学院時代の同輩から忘年会の誘いを告げるものだった。ほっと息をついて立ち上がり、書き終えた手紙を、少し大きめのビニールの手提げ袋に入れて交番を出た。向かったのはポストではなく、かつて一度訪れた相手の自宅。不在、だろうか。そわりと呼び鈴へ伸びた手を自制心で引き戻し、ドアノブに赤と緑の配色が印象的な袋を下げて、自転車に跨り慌ただしく交番へと戻っていった) ニコへ クリスマス当日はリースを有難う。 すぐに礼が言えず済まなかった。 可愛らしい飾りだったから交番に飾っておいた。 訪れた人達全員に褒められたぞ。 とりあえず、一番欲しいものと言えば、君とゆっくり過ごす時間なんだが、 晩酌と、ニコの日と。 来年もまた色々と付き合ってくれ。 まだ寒い日が続くから、体を冷やさないようにな。 追伸:ニコの欲しいものも聞きたい。次に会う時までに考えておいてくれ。 不動一生 (飾り気のない白い便箋に白い封筒に収められた手紙。手提げのビニール袋の中には、真っ白のふわふわなスリッパが一足入っている。前面に犬の顔が立体的に縫製されており、まるでぬいぐるみがそのまま内履きになったようなデザインだった。今にも「わん!」と鳴きそうな人懐こい顔をしたそれが、足元から忍び寄る寒さから彼を守る番犬になりますようにと) | |