サチさんに345. フライパン神父 | |
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(――久しく彼の姿を井戸端で見かけていない、きっとそれだけ多忙であるのだろう。二年前の今日、例年より早く手に入った塩漬けの桜葉を使って春の便りをこしらえたのだった。神父は讃美歌の一節を口ずさみながら、つい今しがた出来上がった白い大福を小さなプラ製のパッケージに入れていた。まるい手のひら大の、一見するとごくごく普通の和菓子は、見た目通りなら漉し餡がぎっしり詰まっているはずだが。今日と言う日、隣人のトレードマークを鑑みれば、その中身は容易に知れよう。然り、中身は餡にあらず、カカオをふんだんに練り込んだ洋風のクリームだった。互いにくっつかないよう片栗粉をまぶしたチョコ大福を、双子のようにちょこんと並べて蓋をする。袋に入れて、配達を願い出に所定の窓口へと。いつぞやのように直接出向くのも考えたが、きっと日々郵便物を届けに回っている彼らの方が、彼の在宅時間や、迅速な再配達の機微も心得ていようから) (今年も、実は去年も。カソックコートにはベイクドチョコをずっと忍ばせ続けていた。帰りの道すがら、その一粒を口中へ放り入れる白手袋。笑みの綻ぶ眼差しは、やがてやって来るあたたかな季節の気配を確かに見出していた) | |