a ニコへ。先月は有難う、花を選ぶのも楽しいもんだな。

352. 不動一生
... 2019/03/14...Thu // 21:58:58

(――警官は物凄い顰め面で机についていた。子供が見たら飛び退かれてしまいそうな真顔だが、別に不機嫌と言う訳では無い。単に真顔なのである。ただの真顔が怖いのである。この男はそういう類なのだ。机上には花束が一つある。マーガレットを束ねて、差し色に桜草を使ったものだ。一ヶ月前のバレンタインに一輪の薔薇を貰ったのがいたく感動したので、自分もお返しにはまず花を用意しようと思った、思ったまでは良かった。が、生まれてこの方、贈り物のためにもそれ以外の用事でも、花とはとんと無縁だった男である。商店街の花屋に通い、図書館で植物図鑑を眺めてもみたが、やはり色と色、花と花の取り合わせは素人にはどうも難しい。第一、そういったセンスも欠乏しているのである。頭を抱えた。そんな折、偶然パトロール中にみつけた小さな草原にマーガレットの群生をみつけた。これだ、と思った)
(風に揺れる白い花弁、明るい黄色はまるで金貨のように輝いても見えた。一番綺麗に見えるひとつを失敬して摘み取り、その脚で花屋へ向かう。これを加えて、花束を作って貰えないだろうかと頼む。――店にあったマーガレットに紛れて、みつけた当人ですらもどれが自分の摘んだものかは最早判別できなかったが、それでも良かった。自分が手ずから選んだ、相手に似合うと思ったものが間違いなくこのブーケを形作っている、という事が重要だったのだ。しかし、花をつかねて抱え歩くのはどうも気恥ずかしい。きもち足早に交番へ戻ると、メッセージカードを引っ張り出してしたためる。花が潰れないよう紙袋へ入れて、一緒に紅茶の茶葉も包んだ。試験管型の瓶に入ったドロップティーは、ハートの形に茶葉が圧縮した茶葉を飴玉に見立てた品で、三粒ほどころりとポットへ入れてお湯を注げばお茶が淹れられるという仕組みである。ストロベリーのフレーバーがあったから迷わずそれを選んだ。入れ忘れたものはあるだろうかと最後に点検してから、郵便を頼むため再び外出した。――無事に相手の手元へ届いた贈り物には、こんなメッセージが添えられている)

先月は薔薇と、チョコと、美味い料理を有難う。
その礼と日頃の感謝を込めて。

(そして、彼に倣って追伸をひとつ)

追伸
菓子も用意したんだが、花束だけで荷物がいっぱいになってしまってな。
都合のつく時間に交番へ来てくれ。夕飯もご馳走したい。

(本当は、小さな箱に入った色とりどりのマカロンは一緒に送れてもしまえたのだけれど。我ながら稚気じみた口実作りだと思いながらの帰り道、奮発して買ったローストビーフは勿論二人分。さて、相手とどうにか都合があうと良いのだが)

g 一生へ。…ありがとう、すごく綺麗だし花を贈られたのは初めてだけど嬉しかった。

354. ニコ
... 2019/03/16...Sat // 23:20:03

(ホワイトデーを全く考えていなかったわけじゃない。ただバレンタインよりも馴染みが薄く彼に渡しただけで満足していて、彼からももう貰っていたことあり、油断していたのはあった。商店街でホワイトデーの広告を見てはっとしたのだ、やはり何かしら彼に用意したいと。ただ単に食べ物のみというのも味気ないなと思った末に馴染みの手芸屋に寄って、ボタンやら布やらを買って家へと帰った。取り掛かったのはうさぎのぬいぐるみ。犬とどちらにしようかと迷ったがこちらにした。本を読みながらではあるが数日かけて出来上がったものはなかなか可愛らしく思える。手足はボタンでつけて座らせたり、腕に動きをつけたりということがある程度出来るようにしておいた。全体はベージュ色で、耳と手足は赤い花柄の布地が出ている。そして首もとには赤リボンを巻いて完成とした。出来上がったそれを綺麗に梱包して送ってもいいかなと思っていたのだがどうせなら今度は手渡しにしてしまおうと考えた。――いざ当日、玄関先に届いた花束に配達員も驚くぐらいにわかりやすく目を丸めて、受け取った花束。すぐに家の中に引っ込んで花瓶を取り出せばダイニングに飾り付けた。「すげえ綺麗…かわいい」としばらくぼーっと眺めて堪能してから紅茶に視線を移す。これも可愛らしくてお洒落でこのままインテリアのひとつになりそうなくらいだ。一杯淹れようとポットの電源を入れながら、メッセージカードに目を落とせばそこに書いてあった文面を見てぴたりと動きを止めた。そうしてすぐさまお湯を沸かすのをやめ、トートバックにぬいぐるみを入れてそのまま家を急いで飛び出していた。時刻は夕暮れ、弾んだ足取りで家を出たがそれを周りの人間に悟られないようになぜかすまし顔で交番まで歩く。)

(交番についたならすぐに飛び込んでぴしゃりと扉を閉めれば彼に向ってそのままトートバックを差し出すだろう。荷物を受け取るような素振りを彼が見せればその中身を確認するように促すはずだ。)…オレからのお返し。ちゃんと大事にするように、可愛すぎるからって返品不可だぞ。お菓子も夕飯も遠慮なくごちそうになるぞ(なんて照れを隠すように偉そうに口にしてからふにゃと表情を崩して笑った、今度はいらないなら捨てていいなんて、言わない―)


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