レアン37. *** | |
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(23日。何時しか寮の扉脇に置かれていたのは一つの段ボール。蓋を開けば、編み籠に入った桃と紙片が一枚見えるだろう。その下には例の木箱の姿もあった。) 誕生日おめでとう。 (紙片には、一言と右下の方に12と数字だけが記されていた。去年と同様、箱はからくり箱仕様となっている。ただし、難易度は少々上がり、今回は12回仕掛けを移動させる必要があるという事らしい。箱の中身は、チェロを弾く猫の置物と写真が何枚か入ったアルバム。ポラロイド写真の被写体は鈴蘭。毎日――は面倒臭がりには無理だったので何日か置きに撮ったものらしく、写真の裏に書かれた日付は飛び飛びだ。差出人の名前はやっぱり記載無し。そそっかしいというよりも、横着した結果である。) | |
(冒険家に)44. R | |
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(――霜月の終わりが近づき、師走の気配に肩を縮める或る日のことだ。筆不精の男は白い便箋を手に取り、金色の罫線の上にペンの先を置いた。筆不精が故に、そのペンの走りはとてもぎこちない。) 植え替えは今の時期に。 11/23 勝った。 夜と早朝は寒いからだろう。町には人通りが少ない。夜ならば特に。 静まり返った町や道は圧巻だ。早起きの猫や犬はたくましい目をしている。 白い吐息が美しい。夕暮れから夜の外灯に照らされるサザンカも美しい。 もうすぐスイセンが咲く頃らしい。スイセンも美しいらしい。 星座は詳しくないが、冬の星空も美しい。 イッカクジュウやヤマネコが夜空にいるらしい。探してみるのも楽しいだろう。 冬は好きか? 良き冬を。 (白い便箋に同封したのはチェロ猫の写真だった。傍には11月23日付けの新聞が写っている。時間がかかったが今回のからくりの謎も無事に解けたと知らせるためだ。――最後に山茶花の花びらも一枚入れて封をする。宛名にはしっかり住所と名前を記載したが、カッコ書きに悪戯な期待を込めたのは、2ヶ月前に届いた手紙の差出人の横着を思っての悪巫山戯だろう。――「良き冬を」ポストに投函しながら、そっと呟いた。) | |