ハルへ4. 晴臣 | |
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(大男には似合わないカラフルな、それでいて柔らかい色づかいの便箋。仕事終わりに寄った店には、他にも沢山種類があった。その中でもこの花柄を選んだのは、見ていると彼の明るい笑顔を思い出したから) ハルへ ハル、誕生日おめでとう。 またハルがオレより大人になって、ちょっとさみしいです。 でもハルが、よっぱらうとこは見てみたい。その時は、オレが家まで送ります。 いつもそばに居てくれてありがとう。 ハルが近くにいると楽しいし、うれしいし、安心する。ハルも同じ気持ちだと うれしい。 ずっと大切にするので、これからもよろしくお願いします。 晴臣 (ふぅぅ…と、止めていた息を一気に吐く。メールや電話ばかりに慣れてしまっているから、手紙を書くのは未だに不得意だ。いつもぎこちない、子どもみたいな文章になってしまう。それでも書ききれば丁寧に封をして。彼は喜んでくれるだろうか…?想像しながら、出来あがった手紙を部屋の明かりにかざしてみる。――せっかく取れた休み。今日は自分の部屋で、出来る限りの楽しい時間をプレゼントしよう。いつも甘やかしてもらっている分、沢山お返しをしよう。まずは昨夜書いた手紙から。カフェオレとコーヒーを用意し一息ついた所で、やけに真面目な顔をして渡すだろう。受け取ってもらえたなら、そわそわと正座して。目の前で読まれるのは恥ずかしい、と気付くのは、たぶん彼が封を開けてからだ――) | |
晴臣、ありがとう!5. ハル | |
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(誕生日。特別な日。特別楽しい日。お祝いの日。そんな一日、今回はとびきり特別な日になるだろう。だって、とうとう、いよいよ、ついに。ついに大人になれるのだから。――そんな高揚した気持ちで過ごす一日の、その中に貴方が居る。それがどんなに幸せなことなのか、会えただけでも痛感しているのに。手渡される手紙に、まあるく目を見開いては、それを受け取って。便箋に綴られている文字をひとつひとつ目で追いかけながら、思わず表情が緩んでいくのが分かる。同時に、ほんの少しだけ鼻の奥がツンとした。何度も何度も読み直そう。いつだって、何があったって、この手紙を胸に抱けば頑張れるような気さえして。へへ、と満面の笑みを浮かべては、こっちも貴方と同じように正座して、慣れないながらぺこりと頭を下げてみる。「よろしくお願いします」とはっきりゆっくり告げて、顔を上げればニシシ、といつも通りに笑ってしまおう。「ありがと、晴臣」と――愛おしげに眺めるのは手紙と、貴方と。可愛くて優しくてイケメンな恋人は、そわそわと照れ臭そうな表情を浮かべているだろうか。今日はたっぷり甘えて、貴方の仕事の話も聞いて、自分の話もたくさんたくさん聞いて貰おう。はじめてのお酒はいつにしようかなとか、その時はちゃんと迎えに来てとか、たったひとつの歳の差の、それでも決して埋まらない距離を詰めるべく、たくさんたくさん、お願いごとをしようと決めた。そうだ、とノートの一ページを破いては、) 5月22日 ふたりでいっぱい笑うこと 困ったことや悲しいこともたくさん話すこと おねがいごともし合うこと 自分のことも、相手のことも、ちゃんと大切にすること 大好きっていっぱい言うことを約束します! 久住遥 (20歳、大人になって初めての決意は貴方のために。ペンを渡せば、「晴臣もサインする?」なんて笑って。子どもっぽいこんなお遊びも、きっと貴方となら楽しんでいけるから。) | |
おめでとう、ハル。7. 椎名晴臣 | |
| (目の前の貴方が、静かに文字を追っている。素直な気持ちを書いたからこそ、やはり目の前で読んでもらうのは少し照れる。読み終わったらしい貴方になんて言おうか迷っていると、丁寧にお辞儀をされ、つられてこちらもぎこちなく頭を下げた。「いえいえこちらこそ…」なんて頭をかきながら。顔をあげた貴方はいつものように笑っていて、その笑顔はやっぱり、大きくて明るい花を連想させた。なにか書きだした手元を不思議そうに見て、ペンを渡されればふっと笑い「必要なら、いくらでも」と顔を近づける。けれどサインなどしなくても、貴方が望めばそれはいつだって叶うのだと教えるように、唇にそっとキスをした) | |