ぽちくんへ98. いちじょう | |
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(先日から自室に置かれたガラスのイルカの傍らで、筆を走らせたのは表面に彼の生まれ星座である獅子が描かれている白いグリーディングカード。この星座に該当する者はこの島に、彼以外にも数名居はするけれど。仮に誰かが記された文面に目を通したとして、誰に宛てたものであるかは一目瞭然である筈だ。――万が一にも送り間違いなど、優秀な配達人が起こすとは思ってもいないのだが。) たんじょうび おめでとう! ことしも おいわいできて うれしいです また あそびに きてください いるかと いっしょに まってます 陽 (書き終えた文面を今一度見直せば、あとは用意していた包みにそのカードを添えるだけ。そうして配達人へと預けられた包装は、小振りな長方形。淡い水色の包装紙に濃い青のリボンがされたそれを開けば、昨年の彼からの返事を受けての“甘い酒”が顔を出す。一条自身も好んで口にする事の多い、レモンを用いたリキュール――リモンチェッロ。なかなかに度数の高いそのリキュールを、彼はどのようにして口にするのだろう――) | |
×××99. ポチ | |
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(老人宅の縁側にて、溶けるように寝転がっていれば配達人の声が降ってきた。重い体を起こして、うちわを扇ぐ。手渡されたそれを受け取って、じっくり観察する。暑い中、自分への大切なものを届けてくれたお礼にアイスを渡して、配達人には別れを告げた。添えられたカードを取ると、漢字の読めない自分のことを考えてくれた優しい文章が目に入る。描かれた獅子は凛々しくも見え、可愛らしくも見える気がする。次にリボンを解く。それはもう丁寧に、丁寧に。しゅるりしゅるりと心地良い音を立てて、耳をくすぐった。心は早くと急かすのに、何故かその手はゆっくりと動く。開けてしまうのが勿体ないのかもしれない。包装紙は少しだけ不器用に破いてしまったけれど、許してほしい。出てきたのは目を惹かれる黄色。ほんのりと良い香りがする。おそらくだが、酒だろうか?―ああ、そう言えば、去年貰ったロックグラスがあったのを思い出した。もしかしたらこれを注ぐのは少し違うのかもしれないが、それでもいい。彼から貰ったものだから、それでいい。大切にしまっておいたそれを取り出して、たった今届いたプレゼントも持ち出して、彼の家に向かおう。無事彼に出会えたのなら、満面の笑みでこう言おう) 「一条さん、プレゼントありがとう!…良かったら、一緒に飲んでください!」 | |