紅くん71. ライアー | ||
紅くんみたいな きいろ みつけました。 ぼくもいっしょ なので、おすそわけ。 たまごやきも きいろ。 (ピンク色の可愛らしい封筒は小さい子に貰ったもの。セットの便箋に書かれた文字は罫線なんてお構いなしに太いマジックで。封筒はきっとぽこぽこと不格好に膨らんでいる。だって中にはいっぱいのタンポポが同封されているだろうから。)
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サチさんへ60. 周防幸正 | ||
『本来なら直接お願いしに伺うものですが、仕事から手が離せないもので郵送で失礼致します。名前はレンジさん2号です。後ほど時間ができ次第、ちゃんと挨拶に伺いますね。もし、何か必要なものがあれば言って下さい!ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします。 PS:ブタみたいな黒猫がお邪魔してたら、ごめんなさい。』 (とある正午過ぎ、そんな手紙と共に、そこそこの大きさな荷物が彼の元へ届くだろう。運んできた配達人は疲れ切った表情で「レンジなんて…新しいの、買えばいいのに…!」なんて、きっと文句を垂れたに違いない。その言葉で、箱の中身や送り主について大体の察しは付くことだろう。配達人と送り主との間で、ちょっとした言い争いがあったことも、何となく想像できそうだ。――段ボールを開けば、そこにはクッション材に包まったオーブンレンジ。レンジ内の底と、扉のガラスに見事なヒビが入っており、何とも可哀想な状態である。勿論、飛び散った卵や汚れは掃除済みだ。一緒に届いた手紙には、直接届けに行けなかったことの謝罪と挨拶、そして謎の追伸。その意味に、いつの間にか傍らに居るであろう太った黒猫の存在に、彼はいつ気づくだろうか――。)
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ポチくんへ68. 亘秋久 | ||
(この時期に見られる桃色の桜飾りの便箋。風情のあるその手紙にはあまり釣り合わない癖のある文字がつづられている。) ポチくんへ こんにちは! この前お手伝いのこと話してくれていたのは有効かな? 祝い酒だー、お花見だーってお店が忙しくて、ポチくんがいいなら暇な時にお手伝いに来てくれると嬉しいです。お給料も出るし、店長もサービスしていいよって! ポチくんが来れる時に来てくれて大丈夫なので、もしよかったらお店に来てね。 あ、勿論お客さんとしても大歓迎! 熊五郎商店店員 亘より
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ライくんへ62. 花野紅より | ||
(透明ボックスに桜の絞り出しクッキーを丁寧に詰める。可愛らしいピンク色はイチゴのフリーズドライパウダーを使って、花の中央には数粒のアラザンをのせた。短いメッセージと小鳥のイラストが描かれたカードは上部に穴を開け紅白の紐を通し、そのままボックスにきゅっとリボン結び。「それじゃあ後はお願いね?」お茶を飲んで一休みしていた郵便屋さんに託したホワイトデーの贈り物は、本日中に大事な大事な友人の手元にきっと届くだろう――。) ぼくは雪も氷も好きだけれど、春のぽかぽか陽気や桜も好きだよ。
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深夜くんへ58. 山吹ヒナ | ||
(ドアノブにかけられた紙袋。中にはそれぞれ青と赤のリボンで飾られ、猫型のはちみつクッキーで膨れた小袋が二つと折りたたまれたメモ用紙が一枚、) 誕生日おめでとう! 味見したから大丈夫だとは思うんだけど、良かったら食べて。(確か双子だったよね?) これからもよろしくね。 ヒナ
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周防先生へ52. --- | ||
(動物病院のポストにある日届けられた紙袋。中身は淹れたての珈琲の入った魔法瓶と青いリボンがついた小さな箱。箱の中身は生チョコらしく、周囲にふんわりと甘い香りが漂っているかもしれない。白い箱には銀色で縁を彩られた白色のカードが添えられている。カードには、『いつかのお礼に』と一言だけが丁寧な文字で綴られていた。)
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ぼくのともだち 花野紅 くん55. きみのともだち ライアー | ||
ともだち に ちょこ を 作る日だと でも チョコ もらって たべてしまった ので あげます。 (何て分かりにくい手紙。潮風でちょっぴり柔らかくなってしまったお手紙は、メッセージカードではなく黄色の折り紙に書かれている。字も決して綺麗ではない。一緒に送るのは知り合いのおじいさんからもらったリンゴ。バレンタインも過ぎているし、何だか色々と違うのだけれど、青年は郵便屋さんにそれを託すとき「だいじにしてください」と深々頭を下げたそう。)
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晴臣へ!51. ハル | ||
予告状 今夜は誕生日パーティーです。 晴臣の時間をもらいます。 仕事が終わったら、 オレの部屋に来てください。 犯人より (予告状にしては秘密めいたものも危険なにおいもしないカードである。雰囲気だけでもと、カードのデザインはシックでシンプルな紺色だけれど。思った感じにならなかった文面に、書きながら「あれー?」と首を捻ったことだろう。けれど、それもまぁいいかと。裏返せば) オレは、晴臣が生まれてきてくれたことが すっごくすっごく嬉しいです。 だから、今日はわくわくしてます。 たぶんこれは来年も再来年も、ずーーっと! 晴臣と恋人になってから 特別な日がいっぱい増えた。 これってすげーことだよな? 誕生日おめでとう。 (表よりも細かな文字で手紙を書いて。朝見てもらえるように、日付も変わった深夜に小さな紙袋と一緒にドアへ引っかけた。紙袋の中にはオレンジのランチボックス。包装された新品のプレゼント――ではなく、その中に定番ともいえるようなラインナップを詰めこんだ『お弁当』で。玉子焼きにウインナー、プチトマトにきゅうりがあればそれっぽく見える気がする。ウインナーは歪ながらたこになっているはずで、ご飯の上には久住お気に入りのふりかけ。ビギナー感は抜けないが、素材の味そのもののおかずばかりならきっと不味くはないだろう。ランチボックスの上にはハムスターのシルエット型のメモに「仕事頑張れー!」と、すっかり犯人っぽさを忘れたエール。暇な大学生はいそいそと、今夜のパーティーへ向け準備を始めて――)
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サチ45. ハンサム | ||
(ぷちぷちの梱包材に包まれた正方形の炬燵が、寮のとある一室の前に届けられた。丁度その部屋の住人は不在だったのか。居留守なのか。炬燵は扉の前で通せんぼをするように置いてあって。丁度炬燵のテーブル面の上、炬燵をぐるぐる巻にして守っている重なりあった梱包材に挟まった、子供用のヒーローのイラストがプリントされたポチ袋。宛名は「配線がどうのこうのなってるらしい」とちらっと聞いた故障箇所。送り主の欄には「蜜柑希望」と夢を書いた。ポチ袋の中には本日発売最終日の宝くじが一枚。)
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