※半角英数字4-8文字
h 大泥棒さんへ

249. 探偵より
... 2017/10/16...Mon // 22:40:30

(――ほんとうは直接返したかったけれど、思いの外慌ただしく過ぎ去る毎日にこれ以上季節が巡る前にと探偵は文机に向かう。彼は今どうしているだろう。オモチャ箱のように心躍る日々を過ごしていてくれたらとても嬉しいとエメラルドをふにゃりと溶かし、何度か手を止めながらも丁寧に丁寧に言葉を綴ろう。)

(秋が深まり風も冷たくなったとある日に、紙袋を持った配達員が彼を呼び止めるだろう。紙袋の中には丁寧に畳まれたロングコートと、鮮やかな色合いの紅葉が描かれたカードが一枚――)


きみの大事な宝物をずっと借りたまま、返すのが遅くなってしまってほんとうにごめんよ。
…寒くなってきたから、体調にはいっぱい気をつけて、いっぱい元気でいておくれ。

249...... 大泥棒さんへ ...... 探偵より  


d 鷲宮

244. ーーーーー
... 2017/10/07...Sat // 01:27:19

(気付けばあの夏から随分と期間が経っていて、”家族”で過ごした三日間は幻のようにさえ思われた。件の彼とそれきり顔を合わせていないのは無理もない、互いの生活があまりに擦れ違い続ける所為だろう。そうでなければ、例の夜が己の夢であったか彼の悪戯であったかのどちらかだ。その日この男が思い付いたのは、擦れ違いの改善のための手段であったのか、或いは夢から覚めるための荒療治であったのか。)

(白い封筒と横書きの便箋は、ビジネスに用いるような色気のないものを選んで。封筒に宛名を書いて、便箋の中身を埋めようとペンを取ったものの――成程、少年の手紙下手はれっきとした”遺伝”であったらしい。結局一文字も書かぬままにそれを同封することは諦めて。宛名を書いた封筒の中に、長いこと使っていなかった自宅の鍵をひとつ入れて封をする。封筒の裏に己の名を書こうか暫し迷って止めたのはほんの悪戯心。彼が言う通り「旦那様一筋」ならば、この時期に鍵など送ってくる人物が誰であるかの区別くらいはつくだろうとの、大層な傲慢である。せめてものヒントは、切手の「出羽亀」。)

244...... 鷲宮 ...... ーーーーー  
245...... 俺の旦那様 ...... 鷲宮八慧


e 黒野さん

242. 宿里恭一郎
... 2017/09/09...Sat // 13:31:50

(つい三ヶ月前も似たような時間に自分はこの場所を訪れていた。夏の名残を残しつつも、秋の気配が深まった早朝の風が優しく歯車の看板を揺らしている。宿里は、掌に乗るくらいの小包をその店のポストの上にそっと乗せた。郵送でも良かったのだろうが、中身が傷付くことを恐れての自前宅配。盗まれはしないだろう。此島は民度が高い。一度、店の上、おそらくは彼の自宅があるだろうアパートへ視線をやり、宿里は出勤の為、その場を去った。さて置き去りにされた小包の中身は、丁重にラッピングされた黒のベルベット地の小さなジュエリーボックス。開けると石が、マットの上に鎮座している。指輪に嵌め込みができるよう、エメラルドカットと脇石にスクエアにカット加工されていて、小さいながらも輝きは本物だ。メッセージカードが添えられていたが、どうやら一枚にまとめきれず、同種のものが二枚連なり同封されていた。)


誕生日、おめでとうございます。黒野さん。
以前お借りした指輪。
機能美に傾いたあのデザイン、僕は個人的に好きです。
が、もし…もうひとつ、牙の予備を作る予定があるのならと思い、
貴方にこれを贈ります。

選択肢は多い方が可能性が広がります。
装飾に振り切った牙があっても良いと思うんです。
良ければ使ってください。
黒野さんの手先の器用さがあれば、
この石を指輪に嵌め込むのも、そう難しい話じゃないでしょう?

完成したらまた見せてくださいね。


(石は、かつて彼が己の目を例えた星と似た色をした柘榴石(ガーネット)。人間が出歩けない新月。彼の牙に『自分の目』があれば、もっと色々なものを見ることができるだろう。あの夜、紛い物へと成り下がるも至ったあの場所へ、もう一度近づけるかもしれない。そんな滑稽な発想とエゴに満ちた一方的な願いに満ちた品である。…否、)…そもそも、プレゼントってそんなものだ。(瞳を閉じて、一人緩やかに微笑み呟いた声は、朝の風に溶けて。)

242...... 黒野さん ...... 宿里恭一郎  
243...... 宿里さんへ ...... 黒野


h ニコさんへ

238. 杠霧人
... 2017/08/25...Fri // 17:36:51

(井戸端に顔を出した後、慕っている学芸員より5時間ほど説教をうけた人形師はげっそりとした面持ちでポスト前にやってきた。手には一枚の絵葉書。そっと投函し、ポストに寄りかかるように項垂れた。)………そうだよな、ここは本土とはちげーんだ。(改めて思う。人付き合いが決して上手くはない自分。これまで、こんな風にどれだけの人を言葉で傷つけて怒らせてきたのだろう。――本土にいた頃は人間関係が希薄で幅広く、友人は『使い捨て』だった。失態を犯したとて、また新しいのを探せばいいだけ。しかして、此処は違う。響咲島は全てが狭く、深い。此処を終の住処と決めたのは己自身、なれば…変わらねば。瞳を閉じ、口の中で呟く。「ごめんね」。明日では遅い。思い立ったが吉日と、綴った葉書。そこには想いの一端と、ポケベルのアドレスが記されている。)

オレさ、あん時井戸端で
ニコさんのことないがしろにしたつもり全然ねーの。
言葉選び間違ってごめん。……だから、怒んないで。
今度時間空いた時にさ、ちょっとお高めの店で夕飯奢るんで、
それでチャラにしてくれると嬉しい。

238...... ニコさんへ ...... 杠霧人  
240......  ...... Nico
241...... ニコさんへ ...... 杠霧人


h ぽちくんへ

236. いちじょう
... 2017/08/18...Fri // 09:47:30

(ここ最近は、自室にてとある作業に集中して過ごす事が多かった。其れも無事、納得出来る形に落ち着いたのは前日の事。――自分の誕生日に、彼がくれた”世界”がひどく美しかったから。同じくらいのものを、という事は流石に出来ないだろうけれど、それでも少しでも彼が喜んでくれるものを、渡す事が出来ればと。同じように用意したのは小さな瓶に、水晶や銀粉を散らしたもの。レジンで固め、グラデーションになるようにと暗すぎない紺で染め上げた其れは、ところどころに星が散っているように見受けられるだろうか。瓶を覗き込んだ中に、彼が生まれた日の、夏の空を閉じ込める事が出来ていれば良いのだけれど。)

たんじょうび おめでとう!

おれは うみを もらったので
おれからは ほしぞらを ぷれぜんと!

よければ もらってね

いちじょう

(去年と同じ、白いグリーディングカードに文字を並べれば、小瓶を入れた包みへと添えて。包みはシンプルに黒に纏めて、星の形をしたシールをワンポイントに。例年通りに配達人へと預けたならば、あとは彼が無事に届けてくれる事だろう。見送りながら手を振る様は、安心に満ちたものだ。)

236...... ぽちくんへ ...... いちじょう  
237...... ××× ...... ×××


g 幸正

235. 十
... 2017/08/04...Fri // 20:09:37

(まるで懐かしの修行のように、最近は森から出ることがなかったこの男。まぁしかし、このときくらいは出てやらにゃあ、男として廃るものだ。なんて。お目当ての人物の家の前までいけば、そのまま右袖に隠していた小さな小さな、紙切れをその家のポストにいれる。)

誕生日プレゼントは俺のありがたーい美声で。
アンタのために唱えてやろう。
聞き惚れて腰抜かすなよ。

(その紙切れ、和紙でできた紙切れには、達筆な字でそうかかれているのだろう。この島での友人に、有難い贈り物をしてやろう、と。そのまま袈裟姿の男は立ち去る。)

235...... 幸正 ...... 十  


i 黒野さん

228. 宿里恭一郎
... 2017/06/04...Sun // 05:30:55

(癖がかった黒髪を早朝の涼やかな風がそっと揺らしている。6月に入り衣替えをした薄手のシャツでは少し肌寒く、手に掴んでいた上着を羽織りなおす。商店街の北部へ向かい、宿里の足は進んでいた。主居住区より郊外にある森近く、ただでさえ早朝。人通りはない。赤眼に淡い茶と白を基調とした年季を感じさせる外観が見えてきた。過るは月のない夜の、……。無意識に仕事鞄の取っ手を握りしめる己に気付けば、自嘲の息が漏れた。)何か月経ってると思ってるんだ。(未練がましい、と意識的に力を抜く。歩が止まらぬ限り、結局は辿り着いた目的の場所。外装にそぐわぬ新しい看板を見上げる。歯車……、きっと手製だろう。この店の主はとても器用のようだったから。店は開いているだろうか、否、開いていては困る。この時間帯を選んだ意味がない。窓ガラスがあれば店内を興味本位に覗こうとするも、きっと店主に見つからないように。)

(やがて、店に備え付けられているだろうポストに分厚い封筒をカタンと投函し、宿里はその場を去った。封筒の中身は、数十枚にわたるレポート……内容は今年2月の新月模様である。当日にあったことを仔細に記しており、人間から吸血種になった1人の男性に焦点があてられている。血液を保管する為の日常的な工夫。牙を持たぬ人間が血を啜る為に生み出した指輪の構造、その利点に、人間の己から見えた欠点。月に狂うまでの過程、垣間見えた感情の差異。血液摂取時に伝聞した感覚と、摂取者と被摂取者の脳内環境による味覚への影響に関する考察。そして、これまで宿里が書き綴ったことのなかった『人から吸血種になることで生まれる苦悩』まで…―――あの日、見て、聞き、体感した、身体と脳に残る全ての”記憶”が其処に詰め込んである。レポートの表紙には一筆箋と傷つかぬように丁寧にスポンジで包み込んだ指輪の入ったビニールが貼りつけられていた。)


レポートの返却は必要ありません。お納めください。
指輪、本当に有難うございました。

それから……、僕には写真の才能がないようです。

228...... 黒野さん ...... 宿里恭一郎  
233...... 宿里恭一郎さん ...... 黒野
234...... 黒野さん ...... 宿里恭一郎


i 小沢弟へ

232. アンバー
... 2017/07/23...Sun // 07:51:35

(7月も後半。ひどく暑い日が続いている。蝉の鳴き声が兎角煩くて、額に滲む汗をぬぐい無意識に溜息が零れた。夏は何方かと言えば好ましい方であるが、これはあまりにも、あまりにもである。)…スーパー猛暑、だったか。(ふと思い出した単語をぼやき、ポストへ向かう途中、丁度甘味屋の旗がひらりとはためくを見て、その足は一度止まる。帰りは此処へ寄ろうと決めた。)


井戸端で話していた釣りの話を詰めたい。
俺のポケベルだ。また連絡をくれ。


(簡単な用件と己の連絡先を記した葉書をポストに投函する。
葉書の表面には奇しくも、先程見た甘味屋の旗に記された文字と同じ、優しげなタッチの、赤いシロップが涼を運ぶかき氷の絵がひかえめに描かれていた。)


232...... 小沢弟へ ...... アンバー  


f 大泥棒さんへ!

231. ×××
... 2017/06/16...Fri // 20:21:24

(食紅を使った柔らかなピンクとプレーン生地を一つに纏めてぐるりと絞り出して作ったローズクッキーを6枚。丸い透明ケースに丁寧に重ねて、メッセージカード代わりのタグを通した赤いリボンできゅっと結ぶ。それを英字新聞がワンポイントとなったクラフト紙の袋にちょこんと収めると、お茶を飲みながら待っていてもらった元同僚の配達員さんにお願いしますと両手で渡す。――さて、彼は今日どこにいるだろう?今日中に届くことを祈りながら、甘い香りのするココアが入ったマグカップを、指先で摘んだピョン太くんがくるりと回した。)


お誕生日、とってもおめでとう…!

231...... 大泥棒さんへ! ...... ×××  


i 福永へ

218. アンバー
... 2017/05/10...Wed // 06:01:13

(島に流れる虹の桜の噂は男の耳にも届いていた。日々木を変え咲く桜を探すは困難のようにも思えたが、ふと気付けばどこかしらには人が大勢いて、ああ今日は此処に咲いているんだなということがすぐにわかる。今日は虹の桜の近くに商店街の有志がブースを設けたのだろう、商売根性逞しく様々な品が並んでいることを声高に叫ぶのが聞こえた。威勢の良い声に引き寄せられるように多くの人が足を止めている。男もまた進んで自ら輪に入っていった。虹の花弁のキーホルダー、栞、ブックマーカー、ポケベルストラップなどなど、多種多様のグッズ達。よくもまあここまで色々と思いつくものだといっそ感嘆しながら、目にとまったお守りを2つ手に取った)



2月の新月、……思い返せば色々あったな。
心身共に無理をさせちまったと今更ながらに思う。

神頼みっつーのもおかしな話だが、このお守りは健康長寿に効くらしい。
納めてくれ。親父さんとお前の分ある。


今後もお前が健やかに過ごせるよう。




(購入した 緑色と青色の桜の花弁が中に入ったお守りを丁寧に包装。お守りと共に購入した虹色の花弁をワンポイントとしたメッセージカードに綴る。お守りと一緒に生成色の封筒へ。共に新月を越えたパートナーである心優しい少年に届ける為、男はポストへと向かった)

218...... 福永へ ...... アンバー  
225...... アンバーさんへ ...... 福永正愛
230...... 福永へ ...... アンバー




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